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■ JR奈良駅新駅舎デザインについて 記:横井紘一
  奈良デザイン協会 20周年記念講演会 2004年9月25日


先般JR奈良駅の新しい駅のデザイン画が公開された。高架式の橋上駅で、デザインコ セプトは「奈良らしさの表現」―青丹よし―。五色のカーテンウォール、垂木や釣灯篭な どが特徴という。設計はJR、監修者は川崎清氏(元JR奈良駅デザイン検討委員会委員)だと思われる。供用予定は平成22年。駅周辺3,5キロが高架となる。
下の画像は元デザイン検討委員会委員であった私に送付されてきた外観パースである。一見いかにもモダンである。素材は未定ということだがおそらくガラスや人工建材が中心なのだろう。画面右手には曳き家で保存された旧駅舎が描かれている。旧駅舎は昭和9年戦雲あやしい時期に国威を威厳するため、昭和和洋折衷様式で設計された。旧駅舎の建築意思や造形的評価の是非は別にして、新駅舎からは新しい駅を創造する熱意やエネルギーが感じられない。細部を見ると、駅舎の柱や垂木も釣灯篭も朱、これらのディテールが「奈良らしさの表現」―青丹よし―の表現ということなのだろうか。
そこで先日、奈良デザイン協会の会員の皆さんに「新駅舎デザインについて」上記と細部を拡大したパース画を添付しメールでアンケート調査した。アンケート内容は以下の通り。

そこで先日、奈良デザイン協会の会員の皆さんに「新駅舎デザインについて」上記と細 部を拡大したパース画を添付しメールでアンケート調査した。アンケート内容は以下の通り。
1)今回発表されたJR奈良駅新駅舎デザインについてご意見、ご感想をお書き下さい。
2)今回のデザインについて総合的に判断し、このまま進行しても差し支えないとお考えですか。
・このままのデザインでよい(    )
・一部訂正すべき(    )修正点を具体的にお書き下さい
・デザインを変更してほしい(    )どのように変更すべきかを具体的にお書き下さい。
3) 奈良デザイン協会として何らかのアピールが必要だと思いますか。
・必要(    )その具体策をお書き下さい
・必要でない  (    )

6名の会員から返答があった。要約すると
1)新駅舎デザインに対する回答
・「建築物」を外観デザインだけで評価するのは問題がある。当然、機能との関係、予算と の兼ね合いを見ないといけない。「駅」という空間をどのように捉えるのか、何をそこに創 り、(利用者に便宜を与えるだけでなく)何を見せようとしているのか---デザインコンセ プト「奈良らしさ、青丹よし」では、あまりにも類型的。これはコンセプトというよりは 単に固定観念。建築のコンセプトにはなりえません。「奈良の感動」をスペースデザインす る、「奈良の新しいシンボル」にする、という建築思想が、パースからは見えてきません。 「奈良の玄関」という考え方は、必要条件だと思いますが、「脱奈良らしさ」、または「奈 良そのものの結晶」が、私なら考えてみたい新駅建築のデザインコンセプトです。
・ 広がりと雄大さが有り良い。しかし、全体に少し軽い感じがする。奈良のイメージと て、京都より重く、華やかで荘厳なイメージが日本人には有るのではないか。華やかさを 五色のカーテンウォールが演出するのは分かるがディテールの重みや本物感が欲しい。駅 前は緑の公園に到着した印象を醸し出すイメージ表現が必要である。
・花鳥風月が感じられ、街の歴史がつながり借景を考えた力強い荘厳なコスモロジカルな 駅にしてほしい。奈良駅の東に若草山、春日山があり西には生駒山地が広がっている。自 然につながりをもつ花鳥風月、風水が感じる駅と駅周辺を考える必要があるのではないか。
・デザインについての変更希望は特にない。配慮して欲しいことは、外壁が単調に見え ないような工夫、ホームにて、風や匂いが感じられるように、外部空間には緑を多く、 オープンスペ−スを多く作る、屋根は木造。
・新駅舎に奈良らしさを醸し出すのは、これから1300年の文化を楽しもうとする観光客に は食傷気味な印象である。奈良の静かな空気と同化するような存在感、逆に存在しないか のようなデザインがいいのではと考える。 フィンランドの首都ヘルシンキ中央駅は5年くらい前までは、ヨーロッパの中央駅で唯一 屋根の無いプラットフォームだった。新駅はエリエル・サーリネンにより1914年に築かれ た建物をきちんと残し、鉄骨とガラスで新旧調和したというか、当初のイメージのまま再 生した見事なデザインと感動した。今まで奈良を訪れた人々を迎えた、またたくさんの物 語を生みだした古都奈良駅の「時の恵み」を大事にしたデザインを要望する。
左:ヘルシンキ中央駅正面  右:ヘルシンキ中央駅プラットフォーム
・一言で「何も感じない」・・・・。
一見都会的でシンプルなデザイン見える、だが創造的なもの、新しい発想、とりわけこれ からの奈良を見据える方向性やエネルギーを感じない。駅を利用する市民や観光客や外国 人がこの駅に降り立った時、何をイメージするかという“利用者への想い”が伝わらない。 無難なものには何も感じない。
2)の回答
・このままのデザインでよい(1名)
・一部訂正すべき(2名)
・デザインを変更してほしい(3名)
以上新駅舎デザインに対し、いいと思う意見をまとめると
・広がりと雄大さが有り良い。しかし、全体に少し軽い感じがする。
・デザインについての変更希望は特にない。外壁が単調に見えないような工夫など配慮 してほしいことがある。
次に新駅舎デザインに対し、再考すべきという意見をまとめると
・「駅」という空間をどのように捉えるのか 駅の思想の有無
・「駅」を利用する人が何を感じるか 利用者への想いの有無
という、建築コンセプト以前の思考が無さ過ぎるのではないか。
・デザインコンセプト「奈良らしさ、青丹よし」は類型的でコンセプトにならない。
・奈良らしさを醸し出すのは、これから1300年の文化を楽しもうとする観光客には食傷気 味な印象である。
・創造的なもの、新しい発想、とりわけこれからの奈良を見据える方向性やエネルギーを 感じない。
といった意見があった。デザイン以前の発想に問題があるとの指摘が多い。
それでは、どのような方向性が考えられるのか、幾つかの意見が出た。
・「脱奈良らしさ」、または「奈良そのものの結晶」
・花鳥風月が感じられ、街の歴史がつながり借景を考えた力強い荘厳なコスモロジカルな 駅
・奈良の静かな空気と同化するような存在感、逆に存在しないかのようなデザイン。古都 奈良駅の「時の恵み」を大事にしたデザイン
「脱奈良らしさ」、「花鳥風月」、「奈良の静かな空気と同化するような存在」と言った3 つの方向性が見られた。「脱奈良らしさ」とはどのような形態なのか、「花鳥風月」は自然 環境との共生?「奈良の静かな空気と同化するような存在」も解が分からない。もう少し コンセプトワードにする作業が必要だろう。またデザインの解も求められる。奈良デザイ ン協会として、少ない回答数でもあり、提案プランをもたない状況では、意見として発表 することは、現時点では難しいと考える。 という意見に集約された。
以下は横井の私見である。
私は3年前に開催されたJR奈良駅舎デザイン検討委員会で、“奈良らしい、かつての都 づくりのエネルギーを伝えるものを望む”と発言した。さまざまな機会に “旧駅舎は残さ れたが、当初の建築の目的を終えたものは残骸である。新たな活用がなされても、それは あくまでも余生であり、当初の設計者の意図ではない”“新駅舎のデザインは旧駅舎以上の 創造性と熱意でもって取り組む必要がある”と言いつづけてきた。今回のような「何も感 じない」デザインが予見されたからである。
駅利用者が新しい駅に何を感じるのか、奈良を愛する人が設計者であるべきではないか、 愛さなくても利用者の声を聞いたのか。設計者は奈良の人たちや利用者の声を聞くこと、 そのなかからイメージをつかみ表現することが必要ではないのか。このプロセスが無いと 単なる設計者の思い込みに過ぎない。
奈良の住民として新駅舎デザインに関わる提案を幾つかやってきた。
・JR奈良駅鎮守の森構想(駅を鎮守の森にする構想、地下駅、春日飛火野と駅を結ぶま ち中の鹿の道をつくる・1994年奈良町100年計画シンポジュウム・パネル展千田チー ムで発表)
・若者が残したいと考える町(我が家の大学生の息子と娘の視点で奈良町のDNAを発見、 いかに生かすかを提案・2002年「まちの遺伝子」〜私たちはまちに何を残すのか 〜 私たちはまちに何を望むのか展で発表)
・平成門構想(飛鳥京や平城京の創設に負けないエネルギーを感じる新たな玄関口をデザ イン提案、奈良デザイン協会奥野氏たちと共同提案)
・ 旧JR駅舎再利用案(奈良の若者たちが歌う“明日歌”ライブイベント会場に、2001 年「よみがえれJR奈良駅舎」展で発表)
こうした提案活動で得られたことは大きかった。多くの奈良の人たちが新駅舎を含めた 町のデザイン提案に参画したこと。奈良の未来とは、後世に何を残すかを考え、奈良の町 の遺伝子を探し、新たな発想と創造力をもつことであるとの確認。そして提案者の多様性 を見ると、何もデザイナーだけが表現者ではない、町に住む人たちすべてがデザイナーだ という新しい発想を持たなければならないということであった。新しい駅のデザインを考 える人とは、奈良を愛し、奈良の町にきちんと対座した人たちことではないか、小学生で も高齢者でも、表現者となって考える、もう一度奈良の人が参加する、奈良の人がコンペ を行う「参加のデザイン」がいま望まれている。
下図はこれまでの提案

JR奈良駅鎮守の森構想(1994年)

木のドーム構想卵状の木造屋根で駅舎全体を包む
プラットフォームと駅事務室は透明卵状プラスティック

中腹の三重塔が駅舎、森の中にプラットフォーム

平成門構想
茅葺、朱の柱、石を包むガラスの門とプラットフォーム

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