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■奈良町フォーラム 分科会:五感によるまちづくり

主催: 奈良まちづくりセンター
協賛: 奈良デザイン協会
平成16年11月20日(土)午後1時から午後4時30分
奈良町物語館(奈良市中新屋町2−1)
内容: 美しい風景景観は人間のこころを癒すものである。ところが奈良町(旧奈良市内)の景観は、一部の神社仏閣を除き、近代素材の建築物、車、看板などによって年々悪化し ている。景観は元来、色や形状などの視覚で評価してきたが、嗅覚や聴覚、触覚など五感で感じたらどうなるのだろう。子供たちの遊ぶ声、庭木の香り、土の感触など奈良らしい 景観は存在するのだろうか。分科会では実際に町を歩いて実感、五感調査シートとカメラで景観を採集する。ワークショップの後は奈良町景観再生について、参加者全員で語る。 歴史的都市景観の再生は緊急的課題である。どのような方法で景観再生を行うことができるかを検討し、景観まちづくりへの提言をまとめる。

●進行:横井紘一/上嶋晴久(奈良まちづくりセンター)
内容: 1、 分科会ガイダンス  
2、 奈良町の景観の現状について  
3、 ワークショップ「五感で感じる町歩き」
   奈良町、三条通、興福寺・飛火野付近 参加者全員  
4、みんなで語ろう 「奈良町景観再生」参加者全員で 
5、まとめ 奈良町景観再生 提言メッセージ 
ワークショップ「五感で感じる町歩き」
第一斑: 興福寺・飛火野付近
第二班: 三条通
第三班: 奈良町
三班に分かれ街を歩き視覚(色、形、素材)、聴覚、嗅覚、触覚別に景観を診る
五感調査シート記入、デジタルカメラで撮影
(参考)奈良町の景観の現状について 横井紘一(奈良まちづくりセンター、信州大学)
・景観調査における対象地 
旧奈良町(平城京外京として栄えた地域、現在の奈良市の東部地区)の15箇所を選定。
1)奈良公園(飛火野)2)春日大社3)高畑町住宅地4)東大寺二月堂裏参道5)きたまち手貝町6)奈良県庁周辺7)興福寺境内8)猿沢池周辺9)奈良町中新屋町10)三条通り11)近鉄奈良駅前12)法蓮町南町13)JR奈良駅前14)新大宮周辺15)県道大安寺周辺
・調査結果
視覚「色」=
  奈良町は参道敷石などの鼠系22箇所(29.3%)、町屋などの茶系16箇所(21.3%)及び奈 良公園などの緑系15箇所(20.0%)の3色によって構成(構成比70.6%)されており、高 層で面積の大きいビルの白色系12%、看板の赤系6.7%が近代人工色の突出色として目立っ ている。
視覚「形」=「奈良町景観視覚・形?面積の大きい形?上位5位」
  1位=道路(10箇所)2位=商業ビル(6箇所)3位=看板(5箇所)4位=石畳、階段(4箇所)5位=芝生公園、民家商家(3箇所) 
視覚「素材」=「奈良町景観視覚・素材?面積の大きい素材上位5位」
  1位 アスファルト(9箇所)2位 コンクリート(7箇所)3位 木材(7箇所) 4位 石(6箇所)5位 鉄製パネル建材 ガラス 樹木 瓦(5箇所)
特徴的な素材は、灯篭の石、町屋の木材、屋根瓦、芝生・土、土塀。アスファルト、コンクリートの近代人工物素材が42,7%。
聴覚=「奈良町景観聴覚?上位5位」
  1位 観光客などの人声(12箇所)2位 車騒音(11箇所) 最高81dB 3位 奈良公園 などの鳥の鳴き声(5箇所)4位 鹿の鳴き声、石畳玉砂利、信号音(4箇所) 
特徴的な聴覚は、鹿の鳴き声、木々のそよぐ音、玉砂利、参道石畳の踏音、鐘音だが車騒音(最高81dB)をほとんど地域で確認。
嗅覚=「奈良町景観嗅覚?上位5位」
  1位 排気ガス(7箇所)2位 木々、芝生の香り(6箇所)3位 鹿の糞(5箇所) 4位 土塀の匂い(2箇所)4位 ゴミ(2箇所)
車の排気ガスがトップ。嗅覚なしは19箇所(42.2%)。
触覚=「奈良町景観触覚上位5位」
  1位 アスファルト(10箇所)2位 参道石歩道、階段(5箇所)3位 土(3箇所) 4位 芝生(2箇所)5位 土壁、葉さわり、柱(2箇所)
特徴的な触覚は、参道敷石、土、葉さわり、芝生。特徴なしが調査地点の6割。
五感で診た奈良町景観の課題
1、 近代人工色が突出色 2、近代構造物形状が蔓延 3、近代人工建材物が約4割 4、車の騒音全地域で自然系音を圧迫5、香りのない町身体全体で感じられる自然系触覚を。
 五感を複合化した奈良町らしい独自景観 
 五感による特徴的景観を複合化した結果
 「奈良町らしい独自景観を保持上位5位」
1)興福寺南円堂付近2)奈良公園3)春日大社4)ニ月堂裏参道5)高畑町住宅地興福寺周辺は視覚(色、形、素材)だけではなく、聴覚(奈良町全体に響き渡る鐘の音な ど)や触覚(石畳など)、嗅覚(お線香など)五感全体で景観を形成している。
「奈良町らしい独自景観を保持下位5位」1)新大宮通り(新大宮駅周辺)2)県道大安寺周辺3)近鉄奈良駅前4)三条通(南都銀 行本店周辺)5)手貝門周辺
下位は新大宮、県道大安寺周辺は五感の独自景観を有していない。
2004年11月20日(土)記:横井紘一
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奈良デザイン協会協賛「五感によるまちづくり」開催報告
“なららしいゆとり”子供の声が聞こえるまちづくり
奈良まちづくりセンター主催、奈良デザイン協会協賛の奈良町フォーラム分科会「五感によるまちづくり」が11月20日(土)奈良町物語館で開催されました。参加者は20名、NDAからは浦、松田、細田、西川の各氏が参加され、奈良まちづくりセンターの会員でもある横井と上嶋が進行 役をいたしました。以下はその報告です。
 秋日和、奈良町在住の主婦たちや学生たち、奈良デザイン協会の上記4氏と共に、奈良の町の景観を見て歩いた。奈良まちづくりセンター主催の奈良町フォーラム分科会「五感 によるまちづくり」(奈良デザイン協会協賛)のワークショップ。景観は元来、視覚で評価されてきたが、音や香りの聴覚や嗅覚、さらに足さわりなどの触覚によって景観を再認識してみようという試みである。
  オリエンテーションと横井「感性による奈良町の景観評価」の発表の後、奈良公園(飛 火野周辺)、三条通、奈良町の3班に別れて、五感景観シートとデジカメを持ち、景観を調 査した。奈良公園では、観光客の人声、車の騒音、カラスの鳴き声など、聴覚景観に問題があった。三条通でも、買い物客の人声、騒音、排気ガスと黄色や赤など、原色の建物と看板が目立った。とても、奈良らしい町並みとは思えない、どこにでもある商店街になっているという意見と奈良の住民にとって“賑わい”は重要、そのためには愉しいまちづくりも必要ではないかという意見が交錯した。奈良町では、格子の茶色、土壁の白と視覚的には申し分がなかったが、主婦から「庭木など四季の香りが感じられない」「奈良町では子供の声が聞こえない」という意見が出たのが印象的だった。確かに、子供の声を聞いたのは塾の前だけだった。遊ぶ空間がないのか、遊ぶ時間がないのか、遊び方が変わったのか、子供の姿、声が聞こえない奈良町は変だ。
  その後、参加者全員で「どうしたら奈良の町の景観が再生できるか」を話し合った。軒の高さや色を統一する、せせらぎが聞こえる町などと共に、奈良デザイン協会の細田氏からキーワードとして “なららしいゆとり”を提唱する意見が出た。“なららしいゆとり“とは、奈良公園や歴史的建造物のDNAを活かし、五感豊かな町並みを再生しようということ。”子供たちの声が聞こえるまち“を目指した、いきいきとしたヒューマンスケール設計によるまちづくりを進めたいという参加者の総意となった。
  さて、このようなまちづくりを誰が行うのか。これまでは行政のみで行ってきた。住民は提案権も持たないし、出来上がった景観に対して拒否権もない。それでよいのか、住民は景観形成に参加できないのか。住民それぞれの感性(五感)で得られたものを集約し、まちづくりに生かせる「参加のデザイン」が求められている。今年成立した景観法には住民参加が約束されている。法律の精神にのっとった仕組みを今、行政も具体的に住民に提示しなければならない。残念ながら奈良県も奈良市の動きは遅いのが現実である。
  私は現在、奈良市と信州東部と東京都心の3つの地域で、住民がそれぞれの景観に対しこころでどのように感じているかを調査している。いつも自分が眺めている山や川や歴史的建造物、高層ビルや町並みから得られるものは何か、もしあなたの大切な景観が突然なくなったら・・・あなたのこころの痛み、その対価は幾らかをアンケートしている。まだ最終的な答えは出ていないが、奈良の歴史的景観や信州の自然は人間に平和な気持ちや癒しを与え、東京の高層ビルや町の景観は元気を与えることが分かってきた。同時に、自分を癒す、元気にする景観を対価で評価する金額が一番多いのは奈良の人たちであった。貴重な景観を大切にする奈良の住民、奈良の人たちの感性を生かしたまちづくりが求められていることを強く感じている。


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